見たり聴いたり：
このところ、録画した歌番組（NHK「新BS日本のうた」など）を空いた時間に楽しんでいます。耳に馴染んだ歌詞をたどりながら聴いていますが、放送には時間の制約もあるようで、自分が記憶している歌詞の一部が出てこないことがあり、？と探る中で、歌詞の二番がパスされていることが多いことに気が付きました。
手元のCDや市販ビデオなどで確かめる中で、「あの歌はあそこがいいんだが」と残念に思うこともあります。放送で飛ばされることの多い演歌の二番を掘り出して味わってみます。 １）東京だよ おっかさん（島倉千代子 作詞：野村俊夫、作曲：船村徹） 母が好きだった島倉千代子（お千代さん？）の歌にはやさしい心が感じられます。中でもこの歌はセリフ入りの細やかな歌唱が耳に残っていました。 （セリフ）おっ母さん ねえ おっ母さん 久しぶりに こうして手をつないで おっ母さんと一緒に 東京見物出来るなんて あー とっても嬉しいわ ホラ おっ母さん見てごらんなさい ここが宮城 二重橋よ に続く 一番 （歌唱） 久しぶりに 手を引いて 親子で歩ける 嬉しさに 小さい頃が 浮かんで来ますよ おっ母さん こゝが こゝが 二重橋 記念の写真を とりましょね の後、三番の （歌唱） さあさ着いた 着きました 達者で永生き するように お参りしましょよ 観音様です おっ母さん こゝが こゝが 浅草よ お祭りみたいに 賑かね に飛ぶことが多く、二番が歌われることは少ないのですが、兄弟への情愛のこもった歌詞であることを思い出ていました。 二番は次のようなセリフから始まります。 （セリフ）ねえ おっ母さん 戦争でなくなった兄さん ここに眠っているのよ の後、 （歌唱） やさしかった 兄さんが 田舎の話しを聞きたいと 桜の下で さぞかし待つだろ おっ母さん あれが あれが 九段坂 逢ったら泣くでしょ 兄さんも さらに （セリフ）ねえ お兄ちゃん お兄ちゃんが登って遊んだ庭の柿の木もそのままよ 見せてあげたいわ と続きます。 二番に描かれている家族への情愛が、三番の「浅草観音」に向かう橋渡しになっているようです。その部分を最近購入したCDで味わっています。 ２）風雪ながれ旅（北島三郎 作詞：星野哲郎 作曲：船村徹） 北島三郎の歌唱が耳に沁みついた人気曲ですが、二番を抜いた一番、三番がよく歌われています。 一番 （歌唱） 破れ単衣に 三味線だけば よされよされと 雪が降る 泣きの十六 短い指に 息を吹きかけ 超えてきた アイヤー、アイヤー 津軽（つがる） 八戸（はちのへ） 大湊（おおみなと） 三番 （歌唱） 鍋のコゲ飯 袂で隠し 抜けてきたのか 親の目を 通い妻だと 笑った女（ひと）の 髪の匂いも なつかしい アイヤー、アイヤー 留萌（るもい） 滝川（たきかわ） 稚内（わっかない） 一番と三番の末尾に出てくる地名が「津軽、八戸、大湊」（青森県）から「留萌、滝川、稚内」（北海道北部）へ飛んでしまうことに違和感を覚えていました。 二番を探してみると （歌唱） 三味が折れたら 両手を叩け バチが無ければ 櫛でひけ 音の出るもの 何でも好きで かもめ啼く声 ききながら アイヤー、アイヤー 小樽（おたる） 函館（はこだて） 苫小牧（とまこまい） となっていて、「小樽、函館、苫小牧」と（北海道南部）の町が並んでいることを知り安心しました。一番から二番を経て三番の、それぞれ街の名が三文字、四文字、五文字と韻を踏んでいることも心地よく感じられます。 ここに挙げた二つの唄は放送ではいま活躍している実力派歌手によって歌われており、歌唱力には十分満足をしています。この点は何の不満もありませんが、本稿ではともすれば隠れてしまいがちな「二番」の歌詞について備忘のために書き留めてみました。 令和７年10月26日 稲林記
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